うさぎの蝶番

※個人の感想です

モンブラン界の最終兵器

クリスマスツリーのてっぺんで輝く星の飾りの如く、幾重にも巻かれたマロンクリームの上に鎮座している栗。それこそがモンブランアイデンティティだと思っていた。だからこそ小学校の給食にて、アクセントを持たずともモンブランを名乗っているケーキに出会った時はなかなかのカルチャーショックを味わった覚えがある。

 

わたしがモンブランモンブランたらしめているものと思い込んでいたものは、もう一つある。舌の上から物体が消え去っても残る、あの独特のえぐみのようなもの。

モンブラン嫌いの理由の一つではないかと考えているこの部分は、特別苦手意識を持っているわけではないわたしもあまり好きではない。だから、出されたら食べるものの、自分から率先してこの栗のケーキを買おうとはしなかった。

 

ところが、約10年の時をまたいで、わたしは再びモンブランショックに遭遇することになるのである。場所はフランスがパリ。当時の調べ事の材料とするため、わたしはとりあえず有名な菓子店の代表作を買い込んでいた。それら代表作の一つが、有名なANGELINAモンブラン

正直なことをいうと、渡仏前にリストアップしている最中は特別な期待はしていなかった。ほとんどのガイドブックや旅行情報サイトにも載っているし、日本にも直営店が複数あるし、ただミーハーな人たちに受けているだけなのではと思っていた。

しかし、実際は違った。先述の独特のえぐみのようなものがなく、さらには購入してからホテルで食べるまでに少なくとも6時間以上は経過しているというのに、スポンジ部分はパサつくことなくしっとりしたままだったのである。乗るどころか包み込むレベルのマロンクリームたちが乾燥を防いでくれているのか、はたまた生地自体が特別な作り方をされているのか。その答えは未だ謎のままだが、少なくとも、あのえぐみの存在がモンブランを名乗る最低条件であるとか、マロンクリームを生成する際にどうしても発生してしまうものではないということは分かった。ミーハー向けなんて舐めた口を聞いていたのはわたしです。Je suis désolé.

 

もし恋人のお父さんに「娘と結婚したいなら、モンブラン嫌いなわたしをモンブラン好きにさせてみろ」とか言われて頭を抱えている方がいらっしゃれば、わたしは全力でANGELINAモンブランをお勧めします。…まあ、そのお父さんがモンブランを嫌いな理由がわたしの言うえぐみであればの話だけど。

つまりは、これを食べてもモンブランを好きになれない人は、恐らく味覚が変わりでもしない限り今後モンブラン好きになることは難しいのではないかというくらい美味しいということです。